カウントダウン!

*手柴(恋人前)+プチ堂郁(婚約中)

クリスマス小話
でも堂上教官は出てきません……

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まだ12月に入って間もないというのに年々早くなるクリスマス商戦は過熱する一方で、そこらじゅうがクリスマスモードに染まっている。

堂上とのデートから戻ってきた郁が、いそいそと赤いラッピングの小箱を開け中身を嬉しそうに取り出すのを、柴崎はスキンケア中、鏡ごしに眺めていた。

「で、堂上教官に買って貰ったの?ソレ」
「えっ?うん……」

どう見てもバレバレだと言うのに顔を赤らめて俯く。婚約中でも純粋培養乙女っぷりは健在だ。

「ツリーでしょ?飾りそれだけしかつけないの?」

見た所、それは木製の板を組み合わせたツリーで、カラフルにペイントされている。数十ヶ所のフックがついていて、そこにオーナメントをつけるのだろう。
ツリーの台座には小さな引き出しがたくさんあって、郁は先程そこから幾つかの飾りを出してぶら下げていたが、三つ四つほどしかフックは埋まっていない。

「これ、アドベントカレンダーって言うんだって」

その単語は柴崎にも聞き覚えがある。
12月の始めから一つずつ引き出しを開けてクリスマスまでをカウントダウンしていくものだ。
絵本やタペストリーなど色々あるが、郁のものは子供向けのお菓子が入ったものではなく、オーナメントを飾ってゆくものらしい。

「イベント好きなあんたらしいわね」
「もう始まりはちょっと過ぎちゃったんだけど、毎日いっこずつ増えていくのも楽しいなーって」

そう話す郁の目はキラキラと輝いてまるでサンタを待つ子供のようだ。

「そうやって教官との熱いイヴに向けて想いを高めていく訳ねぇ」
「な!別にあたしはそんな……」
「さっきから顔ゆるみっ放しよーどうせ、ソレ買って貰った時の事でも思い出してたんでしょー」

やだっと両手で顔を思いっ切り挟み込んだから図星だったようだ。
欲しいけど子供っぽいかと逡巡する郁を見兼ねて堂上が半ば強引に買ってやったのだろう、聞かなくともその光景が目に見える。

「別にいーのよ、邪魔しないからゆっくり浸っててちょうだーい」と柴崎は鏡に向き直り、美容液を叩き込むのに専念した。

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業務終わりに手塚と飲みに出かけた際、通り掛かった雑貨屋に郁が買って貰ったものとよく似たツリーを見とめ、柴崎はふと足を緩めた。
シーズンだからか店のほとんどがクリスマスグッズで占められており、アドベントカレンダーも何種類かあるようだ。

「こういうのに興味あるのか」

無意識に視線を送っていたらしい、手塚が柴崎の横に並んでそのうちの一つを手に取った。

「笠原が堂上教官に買って貰ったのが部屋にあるのよ」

「へぇ面白いな、お前も欲しいのか」
「んー、こういうかわいらしいのはあたしの柄じゃないし、部屋に似たようなの二つもいらないでしょ」

そう言うと手塚かはそんなもんかと商品を棚に戻し、今回の目当ての店に話は変わっていった。

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数日後、思った以上に残業が手間取り、一人遅くなって柴崎が館を出ると、ちょうど手塚と鉢合わせした。

「何、手塚も残業?」
「いや、ちょっと調べもんがあって」

そのまま一緒に寮まで帰るかと思いきや、袋に入った包みを差し出された。

「たまたま見つけたからな、やるよ」
「何?」

中を覗き込む柴崎を手塚は手で制する。

「部屋で開けろ、じゃあ俺は戻るから」
「え、うん、ありがと」

柴崎はそのまま特殊部隊の事務室がある建物の方へ早足で去っていく手塚と、どうやらプレゼントされたらしい手元の包みを交互に見ていた。

部屋に戻ると郁は風呂に行ったのか不在で、今のうちに貰った袋を開けることにする。

箱を開けると白い紙で厳重に保護された三十センチくらいの固まりが入っている。
幾重にも巻かれた薄紙を丁寧に剥がしていくと、ガラスで出来たツリーが現れた。

箱の底には白く丸い台座が入っており、銀色のスクリプト体で数字が書かれているからこれもアドベントカレンダーなのか。

――こういうのなら悪くないわね。

ポップなのは柄じゃないと言ったからだろうが、柴崎に似合いそうなのをどんな顔して手塚は探したのだろう。

さてどこに置くかと部屋を見回していると、後ろのドアが開いて郁が帰ってきた。

「あ、柴崎おかえりー」
「あんたもお帰り」

お互いおかえりというよく分からない挨拶を交わしてから郁がコタツの上の物体に気づく。

「それアドベントカレンダー?ガラスなんだぁ、きれーい」
「手塚がくれたのよ」

自分で買ったとごまかす手もあったが事実そのままをするっと言ってしまった。

取り敢えず今日までの飾りをつけてしまおうと柴崎が引き出しを一つずつ開けている間、郁は向かいに座ってキラキラ光るツリーを眺めていた。

「でもさー、手塚ってやっぱ柴崎の事よく分かってるんだねー」
「何よ唐突に」

脈絡のない郁の台詞に、思わず柴崎は今日の分の飾りを取り出した手を止めてしまった。

「だってツリーのアドベントカレンダーって他にも色々見たけど、コレが柴崎に一番似合ってる気がするんだもん。ガラスの透明感とか色合いとかさぁ」

「ふうん」とたいして興味なさそうな返事を返しつつ、改めて見返してみる。

透き通るガラスのツリーは透明かと思いきや、うっすらとブルー系の色が混ぜてあり、オーナメントにも所々に金銀の色が施してあるが、豪華と言うより繊細な細工をよりいっそう引き立てていた。

「まぁ、センスは悪くないわね」
「それだけ?もうちょっと何かない訳ー?」
「あたしにしては結構な賛辞じゃない?」

そう言いながらも手塚に報告する時はもう一言くらいは付け足してやろうかと胸の内で呟いた。

「で、どこに置こうかしら」

家具も少なく狭い二人部屋を見渡してもさっきよりスペースが広がっているはずもない。
唯一打ってつけの共用の箪笥の上には郁のカラフルなツリーが既に置かれている。

「いっそ並べて置く?」との提案に、柴崎はガラスのツリーをそっと持ち上げ、郁が自分のツリーをずらして作ってくれたスペースに置いてみる。
全くタイプの違う二つのツリーが仲良く並ぶ姿は意外と様になっている。

「これはこれでカワイイよね」
「そうね、ここにしましょ」

それから毎朝一つずつオーナメントを飾るのが二人の習慣になった。

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終わりです。

ガラスのアドベントツリーが実在するかは不明です。郁のタイプはよく見ますけどね。