救援要請〜花火大会〜おまけ

*堂郁(郁入隊二年目の夏、内乱中)

救援要請〜花火大会〜のおまけです。

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「どうした手塚」

柴崎からの電話を受けている最中、後ろからかけられた声に反射的に背筋が伸びる。振り返ると堂上が怪訝そうな顔で手塚を見上げていた。
夜分いきなりの電話につい声を荒げてしまったが、そんなに大きかっただろうか。何事にも神経の行き届く堂上ならば気にかけて当然かもしれない。

騒がせた事を詫び、たいしたことじゃないと手塚が告げると、堂上は少し迷ってから口を開いた。

「プライベートを詮索する気はないが…」
そう言いにくそうに切り出して、「班内の案件じゃないのか」と続けた。

確かに笠原は班内の人間ではあるが、業務外のことでしかも靴擦れごとき堂上に逐一報告する事態とは思われない。しかしこうして手塚が巻き込まれ、堂上の耳にも入った以上、形だけでも話しておくとしたものだろう。

そう考え、手塚はほったらかしてあった柴崎の電話を手短に切り、事の行き先を堂上に説明した。


手塚の一通り聞き終わった堂上は苦い顔をして低く呟いた。

「全く、あのアホウ」

いくら業務外でも怪我をするなど自己管理意識が低いにも程がある、そういう意味だろうか、堂上は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
一刻も早く事態を収拾させるべきかと判断し、手塚は「とにかく自分が回収してきます」と踵を返しかけた。

「待て、俺が行く」
「堂上二正にそんなことはさせられません」
「班長の責任があるからな」
「いや、しかし」

完全にプライベートの出来事である。いくら堂上の責任感が強いと言えどそこまでする義務はない。

それなら自分が行きますと強く押すと眉間に皺を寄せた。まずいことを言っただろうか、だが上官に行かせるなら部下であり、笠原の同期でもある自分が行くのが道理だろう。

「なら、二人で行くか。柴崎もいるんだったな?女二人なら男一人じゃ何かあった時に対処し切れんからな」

堂上の意味するところを理解するのに少し時間がかかったが、笠原が手負いであることを踏まえればまあ、女二人という表現に当てはまらなくもないだろう。

「了解しました、堂上教官にまで出張って貰い申し訳ありませんが」
「気にするな、班内のことだ」

恐縮する手塚をを堂上は見上げてひとこと言い足した。

「済まないが手塚、俺の分も外泊届けを出しておいてくれないか。念の為だが」

どこまでも抜かりがないのはさすが堂上と言ったところか、全く感服する。

「俺は先に向かっておく、頼んだぞ」

了解しましたと短く告げて寮長室に向かおうとしてふと振り返ったが、既に堂上の姿はなかった。


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「悪い遅くなった」
「もう、おっそーい」

指定場所に着くと柴崎は一人で若い男にしつこく声をかけられており、手塚は間に割って入った。
膨れた顔と甘い声は恋人を装う為と分かっているので調子を合わせ、柴崎をかばうように手を回してそのまま店外へ出る。

「笠原と堂上教官なら先に出たわよ」
「早いな」
「何で一緒に来なかったの?」

柴崎自身に怪我のないことを確認し、駅へ向かってゆっくり歩き出すと、そう問われたので、手塚は堂上に話し掛けられてからの経緯を説明した。

「であんただけ置いていかれたワケ」
「駅で追い付こうとダッシュしたんだが、間に合わなかった」

柴崎は「ふーん」と興味なさげに相槌を打っただけだったが、何かを考えてい僅かに口角が上がったのを見てそれ以上詮索するのは止めておいた。


もっとも、柴崎の口から聞かなくとも基地までの道中自分の目で顛末を確認することになるのだが。


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終わりです。

どうして手塚じゃなくて堂上教官が現れたか、でした。