青い小瓶

*堂郁(危機)

アロマオイルを渡した日の後日設定です。

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部屋のドアを開けると真っ暗で柴崎はまだ帰ってないようだった。

部屋着に着替えるのは後回しにして部屋に備え付けてあるデスクの前に座る。一番上の引き出しを静かに開けて郁は青い小瓶をそっと取り出した。

誰が見ているわけでもないのに物音を立てずに引き出しを閉め、息までも潜めてしまう。

中身を零さないよう慎重にブルーの小瓶の蓋を外し、鼻を寄せるとふわりとほのかな芳香が広がった。
爽やかな中にもほんのり甘く、決して強く主張するわけではないのにしっかりと印象に残るその香りは白い小花のイメージそのままでもあるし、図書隊の徽章に込められた花言葉を思い起こさせるものでもある。

今は堂上の部屋にも同じ物があるはずだ。喜んでくれたのだろうか。

興味は示してくれたが堂上にとってのカミツレはあくまでも図書隊のシンボルとしてであって、オイルやハーブティーは実はどうでもいいのかも知れない。なんせアロマオイルを直で飲もうとしたくらいだ。

――いやでもお茶飲みたいって言ってたし。

カミツレのオイルをお礼に渡した時にお茶を飲みに連れてってくれと言われた事を思い出す。

ハーブティーの飲める店、思い当たる店はいくつかあるが当然いつもは女同士、男性と二人でなど行ったことはない。
ゆっくりできる静かな店がいいか、せっかくだから雰囲気もお洒落なところにしようか、だが女子に人気のかわいらしい店だと逆に堂上は居心地が悪いかも知れない。

そういえばあの店では前に行った時にはテラス席に仲の良さそうなカップルが座っていて、いいなぁなんて思ったり―――

候補の店で以前見た光景を思い出すつもりがいつの間にかそのカップルの顔が自分と堂上に置き換わっている。何だこの乙女脳!と心の中で自分に突っ込みあまりの恥ずかしさに机に突っ伏した。

カチ。

ドアノブの回るわずかな音に戦慄が走る。

その瞬間、郁は電光石火の如く引き出しを開けて畳んで入れていた包装紙の上に手の中の瓶を放り投げ、叩きつけるように引き出しを閉めた。音が聞こえたか、でも何を入れたかは間一髪、見えなかったはずだ。

「ただいまー、何暴れてんのよ」
「おっおかえりぃ!別にちょっと力入っちゃっただけっ」

柴崎は大して気に留めなかったようで、備品壊さないでよと返しただけでカバンを放り投げて部屋着に着替え始める。

バレなかったかとほっと息をつきかけたが、こと柴崎相手となればそこをまた突っ込まれてバレる可能性がある。ぐっと飲み込んでさりげなくこたつに入りテレビを着けた。

結局お揃いで自分にも買ったことはとても堂上に言えなかったのを思い返した郁だった。

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終わりです。
実は自分にも買ってた、という捏造設定でした。柴崎は多分気付いてます、香りで。