Trick……?〜ハロウィン小咄〜

*堂郁(内乱くらい)

糖度ゼロのハロウィンです。

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「Trick or Treat!!」



「……何だイキナリ」
「何ってハロウィンですよハ・ロ・ウィ・ン」

喜色満面、堂上の目の前に突き出した手をほれほれとでも言いたげに郁は上下に動かす。その様はどこの小学生かと言いたくなる程だ。

「ないんですかお菓子」

嬉しそうに尋ねる顔は持っていないのを当て込んで訓練帰りを狙ったのが見え見えだ。
ついでにいつも殴られてばっかりの上官に一矢報いるチャンスと思っているのも顔にしっかり書いてある。

「持っとるか、そんなもん」
「じゃあいたずらですねー?」

コイツの考えるいたずらなどタカが知れている。どうせろくでもないことだろうが甘んじて受け、あっさり終わらせることもできる。だが、してやった気分丸出しの郁をこのまま帰してやるのも釈に触った。

「ああ、分かった。その前に」
「ハイ」

すでに勝ったつもりでいるのか、郁は堂上の待ったにもニコニコと笑顔で答える。その無防備な面に先程のセリフを叩き返してやった。

「Trick or Treat」

「え」
「え、じゃないだろ。持ってないのか」

一瞬キョトンとした後、郁は視線をさ迷わせる。反撃される可能性を微塵たりとも考えていなかったらしい。迂闊極まりないがもはやこの部下と迂闊は同義語のようなものだ。

「そうかないか、なら仕方ない。その額に油性マジックで熊殺しとでも書いてやろうか」
「く、熊殺しなら教官も一緒じゃないですかー」

形勢逆転に慄いて郁は一歩下がる。
自分よりも少し高い位置にある頭を掴んでヘッドロックをかけてやった。

「やかましい、書かれたくなければとっととくだらん遊びは取り消せ!」
「え、そんなぁ」

せっかくの好機をみすみす手放したくはないと郁は渋るが、さっさとケリをつけようと堂上は腕に力を込めた。

「なんなら二人まとめて俺が書いてあげるよ?」

降って沸いた声に二人そろってぎくりと身体を強張らせて後ろを振り返ると、小牧が柱にもたれて満面の笑みを浮かべていた。
その手には何故か極太の油性マジック、キュポンと小気味よい音を立ててキャップを抜き言葉を返せない二人ににこやかに選択肢のない質問を投げた。

「さ、お二人さん。Trick or Treat?」

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終わりです。