野望達成の日

*手柴(結婚後)

未来話です。御注意下さい。

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「あたしが図書隊初の女基地司令になってもあんたとは友達だから」

冗談とも本気ともつかないその台詞を聞いてから数十年後、稲嶺や玄田を始めとする原則派の数々の画策の末、とうとうその野望が現実のものとなる日がきた。

愛する妻であり同志でもある麻子にその辞令が下った日の晩、官舎でささやかな祝いの晩餐を終えリビングでくつろぐ手塚の元へ、片付けを済ませた麻子が何かを持って来た。

「ワイン、飲まない?」
「ああ、いいな」

ボトルを受け取り、ワインオープナーを探しにキッチンへ戻る妻の背中を見遣って、何気なく視線をラベルに戻す。
ワインもフランス語も詳しくはないが、親戚に実家に来る度ウンチクを語る自称ワイン通がいる為、有名どころくらいは分かる。

「シャブリか……」
お祝いの日に開けるくらいだからそこそこいいものだろうと思いつつシャトー名を見て眉をひそめた。

そのシャトーは生産量が少ない為日本ではほとんど知られていないが、本場では幻のワインとして名高く、日本で口にできるのは超のつく高級店のみという話だ。
『ま、所謂知る人ぞ知るってやつだな』と自慢げに話すその親戚も実際飲んだ事はなかったはずだ。

「麻子、このワイン――」
「ああそれ?お義兄さんからお祝いだって」

事もなげに答える麻子の返事を聞いて手塚は軽くうなだれる。

――まあ、あの兄貴なら有り得なくはないか。

未来企画の会長である実兄、慧は法務省から文科省、政治家にも着々とパイプを伸ばしており、その影響力はもはや測り知れない。
レアもののワイン1本くらいどこかのツテから入手する事はたやすいのだろう。
そう思いつつ何か一言言ってやらないと気が済まないのはもはや癖のようなものか。

「全く気の早い事だな、今日辞令が下ったばっかりだって言うのに」
「あら、届いたのは3日前よ」

これもまた事もなげにさらっと答えられ、完全に言葉を失った手塚だった。

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柴崎には是非図書隊初の女基地司令になって欲しいです。願わくば最後の基地司令に。