次世代へ託して−2−

*柴崎

≪未来話≫≪捏造≫次世代へ託して−1−の続きです。
堂郁&手柴&小毬結婚後

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「お茶でもお入れしましょうか」
業務報告の為、稲嶺の病室を訪れ、ついでにと雑事までこなしてくれていた柴崎が、手を休め稲嶺に問うてくれる。

「ありがとう、お願いします。あなたもお付き合い願えますか」
「ええ、ご相伴に預かります」

柴崎はもう何度も来ており、慣れた手つきで常備してある急須と湯呑み、茶筒を取り出しお茶の準備をする。

「そういえば、今度小牧一正が奥様とお見舞いに見えるそうですよ」
「そうですか。奥方にお会いするのは初めてですが、図書館で聴覚障害を持つ方へのサポートを検討した際には、協力して頂いて非常に助かったと聞いています」
「そうですね、業務部でも利用者と館員、両方の視点で見てくれる貴重なアドバイザーになってくれていますよ」

特殊部隊でも堂上一正と並んで有望株と呼び声高い小牧一正は、年下の幼なじみの女性と結婚して官舎住まいと聞いている。
あいつは堂々と惚気るからからかい甲斐がなくてつまらんと玄田がこぼしていたのを思い出した。

「それは大変楽しみだ。確か妊娠中でいらしたはずですな」

見舞い品で若い人に喜ばれそうな物はあったかと、奥方とも個人的に付き合いがあるという柴崎に、食べられないものの有無を尋ねる。

「医師からは特に何も言われてなかったはずですけど…その洋菓子店なら材料にこだわった自然派がウリですから、妊婦さんにもいいんじゃないですか」
「そうですか、それならこちらにしましょう。我々はお茶受けに和菓子を頂きましょうか」

「あら、たねやですね。楽しみ」
「季節の新作だそうですよ、文科省の友人が毎年求めているそうで」

他の人間にはこんな話はしないが、彼女はこういう些細な情報もきっちり頭に叩き込んでいる。
同期の特殊部隊員と結婚してからは、以前の何が何でも取りに行くと言う姿勢が少し和らぎ、一見何でもない事を幾つも絡めて情報を解いていく事が上手くなった。

それに気付いてから、稲嶺はこんな風にさりげなく情報を落とすようにしていた。


やっぱりおいしいわーと目を細める彼女に視線を移し、今日の本題を切り出した。

「あなたが関東図書基地初の女性基地司令に就任する日が待遠しいですな」
「どうして、それを……」

稲嶺にその話が伝わるとは思っていなかったのだろう、彼女には珍しく瞳が大きく開かれる。
しかし、約束通り情報源を明かす訳にはいかない。

「かつては実験的とはいえ、情報部の部長をしていた人間ですから」

その情報部の実力派であった彼女に意味ありげに微笑む。
そうでしたね失礼しました、と笑う柴崎に一言、これは稲嶺の願望を伝える。

「それに図書隊最後のと付くと尚いいですね」

先日堂上三正にこの話を聞いてすぐに思い着いた事だが、本人はそこまでは考えていなかったらしく、驚きを隠せなかったようだが、やがてにっこりと美しい笑みを浮かべた。

「努力します」
「期待していますよ」

かつての部下から図書隊の未来を担う人物へと姿を変えて柴崎は稲嶺の病室を後にした。

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続きます

稲嶺顧問は柴崎に亡き妻の面影をちょっと重ねてたりしたらいいなーと思ってます。