野戦のココロエ−その2−

*特殊部隊。完全捏造イベントですが、時期は危機くらいです。
ラブ要素は中盤にちょっとだけで殆ど無し。狩猟関連の記述があります。
未読の方は−1−からどうぞ。

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「それではこれより班対抗料理大会を開催を宣言する!」

うおおーっと山を揺るがす怒号をよそに、堂上班の面々は眉間に皺を寄せる者、にこやかな微笑を崩さない者、小さくため息をついてバッグを開く者、意味がわからずきょとんとしている者と様々であった。

「えっ、りょう…り…大会?」
「そう聞こえたな」

郁の呟きに斜め前方、何もない空間を睨んだまま堂上が答える。

「ソレが訓練なんですか!?」
「らしいな。ったくあのおっさんは……」

作戦会議、材料の調達、調理時間、試食及び採点と各行程の時間割りが知らされ、各班作戦会議に入れとの指示が玄田から下る。

訓練に料理なんて何の意味がと言いかけて、郁は一旦口をつぐみ、手塚の方を見た。いつぞやの如く辛辣な皮肉でも飛ばされるかと思ったが、当の手塚は備品を入れるバッグを探って何やら取り出しただけだ。

堂上に差し出したものを郁が横から覗くとそれはハンディタイプの図鑑のようだった。しかも『食べられる茸類の見分け方』『楽しいアウトドア〜自然の中で調理しよう〜』などとまるで今回の料理大会を知っていたかのようなラインナップである。

「さすが手塚だね」

小牧も感心しているが、そのポイントは用意の良さに対してであって手塚が訓練内容を知っていたことに対する驚きは見られない。

「何で!?手塚知ってたワケ?」

「知ってたわけじゃない。が、この間申請書類の処理を手伝ったんだが、飯盒器具の割に炭と携帯食の量が極端に少なかったからな、念の為にと持ってきたまでだ」

噛み付く勢いにさらりと切り返され、自分だけが知らされていなかったわけじゃないと知り少しほっとした郁だが、別の理由で胸の奥がちくりと痛む。

「俺らは航空写真でだいたいのアタリはつけて来たけどね、とりあえず手分けして調達しようか」

小牧の提案に配布された地図を中央に三人が円になり、郁も慌てて加わった。

「そうだな、俺はまず薪を探すから手塚は水を頼む。その後合流するから小牧と笠原は先に材料調達に回ってくれ」

「了解」
「了解しました」




「あの、あたしは何をしたらいいですか」

薪と水の調達場所を相談し始めた堂上と手塚の脇で残された郁は小牧に声をかけた。

いきなりこんな山奥で食べ物を探せと言われても郁には検討がつかない。自分以外は三人とも下調べをしてきたというのに何も用意のない自分が恥ずかしい。

知らされてなかったから知らなかったというのは言い訳で、同じ条件でもみんな何らかの対策は練って来ている。上官二人は別格として同期の手塚と比べても話にならない。
たまたま手塚が申請書類に関わったから。いや、例え立場が逆でも同じことだろう。
郁は気付かず、手塚は他の手掛かりから何らかの事実に辿り着いたに違いない。

「そうだね……手分けするのが一番効率いいけど……笠原さん山遊びしてたって言ってたけど、流石に自給自足まではしてないよね」
「はい……あたしがわかるのは山菜くらいで、キノコとかは下手に触るなって」
「それで充分だよ、じゃあ笠原さんは山菜担当ね、俺はその他を探すから」
「はいっ」


山菜なら資料や下調べがなくても昔の記憶を辿れば何とかなる。
季節ものや採れる場所も検討がつく。都内育ちの3人よりも有利かも知れない。

自分なりの任務が見つかって郁は小牧に見えないようにほっとため息をついた。

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続きます。→−3−